映画『帝都物語』の解説・概要
製作年 :1988
製作国 :日本
上映時間:135分
ジャンル:ホラー、SF、アクション
監督 :実相寺昭雄
キャスト:嶋田久作、勝新太朗、原田美枝子、石田純一、佐野史郎
作品の見所・オリジナリティ
バブル時代特有の派手で豪華絢爛なSFスペクタクル
庵野秀明も影響を受けた実相寺昭雄の世界
創作のジャンル参考ポイント
悪のカリスマ :★★★★★
ほんのり漂う戦争の臭い:★★★★★
和製スチームパンク :★★★★
あらすじ
平安時代以降、東京の街の守護者として眠っている怨霊の平将門。
将門はその気になれば日本を破壊することもできるほどの怨念を有していた。
そして、明治末期、軍人の恰好をした謎の巨漢・加藤保憲は将門を蘇らせて日本を破壊しつくそうともくろんでいた。
その邪悪な野望を倒すために、日本の社会を裏で支配していた実業家の渋沢栄一は陰陽師の辰巳家と手を組み、加藤を倒そうとするのであった。
ネタバレ レビュー・感想
1988年、バブル全盛期のころに製作された豪華な日本SF映画。
この時代、洋画も全盛期であったことから、かなり日本映画界としては「なめんじゃねえ」という意気込みで製作されていた。
その反面、ストップモーションやアニマトロニクスなど、日本では結局あまり使用されることのないまま衰退した特撮技術をふんだんにみせつけている。
現在ではこういった派手なスペクタクル映画は邦画ではとりにくくなっている。
少し悲しい話である。
また本作に出てくる加藤保憲はそのカリスマ性・不気味さ・威厳などからその後複数の作品にオマージュをされている。
旧日本軍の将校のような姿をしたその姿に、身長180㎝以上という巨躯を持った嶋田久作はまさに異形といっておかしくない不気味ないでたちをしている。
さらに、本作は明治から昭和初期までの日本の最も華々しく輝いた文明開化の時代を描いている、この街並みが非常に美しい。
しかし、歴史を勉強されている方ならわかるが、その後日本は太平洋戦争を引き起こしてしまい、米軍によってこの華々しい輝いた東京を破壊されてしまうのだが、本作はその街並みを帝国軍人である悪役の加藤が高笑いとともに蹂躙していく、この光景はまさしく戦争の暗喩なのである。
本作に出てくる加藤保憲は、初代ゴジラと同じく戦争の象徴なのだ。
ヨハン・シュトラウスの「こうもり」やワーグナーの「ラインの黄金」のようなクラシックの名曲たちも本作のどこか怪しく・終末的な世界をうまく描いている。
と、映像・音楽の面に関しては問題がないが、ストーリーにかんしてはかなり駆け足気味で、少し一般受けはしにくい映画ではあるかもしれない。
だが、本作をみると、クラシック音楽を聴くだけで文明開化前後の日本が徐々に大日本帝国への野心に目覚めていくそんな恐怖の過程を思い浮かべるかもしれない。
日本の歴史を題材にしたSFが好きだったり、そういうものを作ってみたいという人にはオススメの一本だ。
恐らく色々な意味で、もう二度と本作のような映画は出来ない可能性が高いので、是非見ていただくことをオススメする。
おすすめ度
★★★★☆
バブル時代の日本の勢いをみるだけでも価値あり!
作成秘話・豆知識・マニアック要素
①本作の悪役である加藤保憲は、その後「ストリートファイター」のベガに大きな影響を与えている。ビジュアルや超能力を使う部分などそっくりである。
②本作で悪役の加藤保憲を演じた嶋田久作は本作で映画デビューとなったのだが、そうとは思えないほどの貫禄にびっくりである。
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